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【VivaTech2024③】サステナブル、ウェルビーイング、フェムテック文脈でのテクノロジー

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2024年5月22日〜25日、仏パリで開催された欧州最大のテックイベント「VivaTechnology (VivaTech)2024」を現地取材したレポートの最終回は、世界各地から集まった化粧品関連出展企業をはじめ、ウェルビーイング分野におけるAI搭載デバイスやフェムテックのほか、動植物由来のバイオマス素材や、顧客体験を高める店頭ツール、パーソナライズを実現する美容デバイスなどを紹介する。


独自のバイオマス素材で注目を集めた日本企業

ユナイテッドシルク:シルク由来の化粧品用のバイオマス素材

日本が特別招待国として設けたブース「ジャパン・パビリオン」で注目を集めたのは、愛媛県を拠点に2016年に創業した養蚕業におけるアグリ・テクノロジー企業、ユナイテッドシルクだ。シルクはほとんどが繊維素材として使用されるが、主成分であるフィブロインは18種類のアミノ酸で構成されるタンパク質であることから、繊維以外のさまざまな分野で活用できるとする。化粧品もそのひとつで、フィブロインは皮膚の保湿成分であるNMF(天然保湿因子)とも組成のバランスが似ており、肌の健康促進・保湿効果などが期待できることから、シルク由来のバイオマテリアル(原料)として大きな可能性がある。同社は独自の加工技術で、蚕の繭からフィブロインを抽出して「シルク水溶液」と「シルクパウダー」を精製し、化粧品をはじめ、食品、医療など多分野でのシルク活用を目指す。

出典:ユナイテッドシルク公式サイト

また、同社は蚕の飼育から原料抽出・加工までの全工程をAIを活用して自動化するとともに、ロボテックス技術で統合した生産方式「スマート養蚕システム」を確立。従来型の養蚕は5〜10月に限られるが、同社システムでは年間を通して蚕を大量に飼育でき、安全でトレーサビリティのあるシルク原料を生産できるとする。ユナイテッドシルクはCES2024にも参加しており、「米国では食品分野の可能性を感じたが、欧州では化粧品分野に強い手応えを得た」と語る。2024年3月末には、レオナールやダックスなどアパレルブランドを傘下に持つ三共生興グループの出資を受けて業務提携しており、グローバル展開を加速したい意向だ。

ジカンテクノ:農業廃棄物から作るサステナブルなバイオマス素材

また、LVMHグループが主催するLVMHイノベーションアワードでファイナリストに選ばれた大阪発のジカンテクノは、収穫した稲を脱穀した際に発生するもみ殻といった農業残渣などの植物性廃棄物を活用して、独自製法でバイオマス由来の素材開発を行う。たとえば、日本国内では米のもみ殻は処理が難しい農業残渣とされているが、これを化粧品の使用感(肌に触れた感触)改良などに使用できるシリカや、アイメイクやマスカラなどに使用できるバイオマスカーボンに変換するという。VivaTechではグローバル大手化粧品企業からの関心も高く、ライセンス契約による技術提供で海外進出を目指す。

店舗や自宅でユーザー体験を高めるツールやデバイス

BryanThings:インタラクティブな小型スマートミラー

顧客体験のデジタルソリューションを提案する仏企業 BryanThingsは、ギフト用の口紅の自動販売機、AIフィルターの写真プリント機など、実店舗で活用できるデバイスの開発で10年以上の実績をもつ。今回のVivaTechでは、店頭に設置する小型スマートミラーを発表した。現在はプロトタイプだが、ミラーの機能は企業ニーズに合わせてカスタマイズ可能で、売り場の製品やテスターの前に設置して、チュートリアル動画を流したり、タッチスクリーンでインタラクティブに商品情報の詳細を確認するなどの消費者ニーズに応えられるとする。

BryanThingsのスマートミラー(著者撮影)

NINU:AI搭載の「スマート・フレグランス」デバイス

米ニューヨーク拠点のスタートアップNINUは、100種類以上のフレグランスを作り出すAI搭載のフレグランスデバイスを提案。専用アプリにはあらかじめ調合された香りが20種類ほど用意されており、そこから好みの香りを選べるほか、使いたい原材料の種類や香りの強さなどを指定すると、内蔵の3種類のカートリッジからオンデマンドで自動調合されて、デバイスの噴出口からパーソナライズした香りが噴霧される。さらに、AIがユーザーの香りの好みの傾向や、使用する時間帯、天候などをトラッキングし、使用する時刻や目的、気分に合った香りの提案もできるとする。

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